• ホーム
  • クリニック紹介
  • 診療科目
  • 健康診断
  • 自由診療
  • アンチエイジング
  • 企業様へ

アルファリポ酸療法

4)アルファリポ酸点滴療法

αリポ酸は、生体のエネルギー産生反応おける補酵素として働くとともに、優れた抗酸化物質です。臨床では以下糖尿病性神経障害の治療に使用されています。

①糖尿病性神経障害

慢性肝炎・肝硬変Berkson ALAプロトコール)

悪性腫瘍(IVC-ALA-LDN Cancer Protocol

詳しくはこちらへ。

 

アルファリポ酸とは

αリポ酸は、肝臓や腎臓、心臓などに多く存在し、細胞内では主としてミトコンドリアに局在します。優れた抗酸化物質であるとともに、生体のエネルギー産生反応おける補酵素として働きます。具体的には細胞内のミトコンドリアにおいてピルビン酸脱水素酵素によりアセチルCoAが生成される過程で補酵素として作用します。この間にαリポ酸はアセチルジヒドロリポ酸に変化します。

 αリポ酸の抗酸化物質としての特徴は、水溶性・脂溶性の両特性を有し生体内のあらゆる所に局在できること、酸化型ビタミンC、ビタミンE、CoQ10を還元して再生する作用が有ること、ジヒドロリポ酸にも抗酸化作用が有ること、ジヒドロリポ酸は酸化組織傷害の修復を助ける作用があり、修復・再生酸化ネットワークとして機能することなどです。

抗酸化ネットワークとは

酸化ストレスに対する生体の抗酸化防御機構には3段階が考えられています。

第1段階では活性酸素そのものの発生を抑制します。スーパーオキシドに対するSODや、過酸化水素に対するカタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼがこれに相当します。

第2段階では発生した活性酸素・フリーラジカルを捕捉し、安定化させます。水系ではビタミンCが最も効率よくラジカルを捕捉し、膜に発生した脂質ラジカルにはビタミンEやユビキノールが重要です。

第3段階では酸化的損傷を受けた脂質、タンパク質、DNAなどを修復・再生します。ジヒドロリポ酸は酸化組織傷害の修復を助けるといわれ、修復・再生型酸化ネットワークとしても機能します。

 

抗酸化ネットワークとは、発生したフリーラジカルを生体内で消去するために、抗酸化物質であるビタミンC、ビタミンE,コエンザイムQ10、リポ酸、グルタチオンの5種が共同して作用し、強力な相乗効果を発揮することから命名されたものです。(図1参照)

抗酸化物質が共同して作用すると、各分子の作用を補強しあい、抗酸化物質の適切な生体内バランスを維持するうえで有効です。このようなネットワークには他にはない特別な作用があり、フリーラジカルを消滅させた後に相互に再生しあうことが可能で、このような再生機構がネットワーク系抗酸化物質の作用をさらに増強させる結果となっています。各抗酸化物質はそれぞれ特有の細胞内局在を有しています。細胞膜は主に脂質で構成されているため、脂溶性のビタミンEやCoQ10は細胞膜の脂質をフリーラジカルから保護しますが、水溶性である細胞内や血漿中では作用できません。このような水溶性区画では主にビタミンCやグルタチオンなどが作用します。リポ酸は水溶性にも脂溶性にも存在が可能であり、両区画で抗酸化物質として作用するだけでなく、水溶性抗酸化物質と脂溶性抗酸化物質の両者を再生できる特徴が有ります。

臨床では

1)糖尿病性神経障害

   高グルコースによって惹起される生化学的異常、細胞内代謝異常の殆どが酸化ストレス増強に関与します。酸化ストレスは血管合併症の発症、進展のみならず、膵β細胞障害やインスリン抵抗性の増悪を介して糖尿病の病態を悪化させる重要な要因となっています。

 ドイツを中心に欧州全てで糖尿病性神経障害に対するαリポ酸点滴療法と大量経口投与が保険診療で行われています。痛みやしびれ、異常知覚、自律神経症状(起立性低血圧やED、頑固な下痢など)が軽度~中等度に改善されるとの報告や、自覚症状とともに神経伝導速度、知覚テストの全てが改善したとの報告も有ります。  

具体的にはαリポ酸600mgの点滴を週5回で3週間、その後週1~2回とする方法や、週1~2回の点滴+経口投与とする方法などが有ります。

  

2)慢性肝炎・肝硬変Berkson  ALAプロトコール)

肝がんの原因の約70~80%を占めるC型慢性肝炎は、“免疫”だけではなく、“酸化ストレス”の関与が臨床・基礎の両方で証明されるようになり、非アルコール性脂肪性肝炎の発症や進行・発がんにも“酸化ストレス”の影響が示唆されています。HCV蛋白、特にコア蛋白やNS5Aの発現により酸化ストレスが誘導されます。HCV蛋白によるミトコンドリア障害が長期間継続された肝細胞に加齢、アルコール、鉄沈着が加わることによりさらなる酸化ストレスに暴露され、核DNA損傷が生じやすくなると考えられています。

New Mexico統合医療センターの Berkson医師はαリポ酸点滴と抗酸化サプリメントで急性・慢性肝疾患を治療しています。

  1日2回のαリポ酸点滴を週5日連続で2週間行います

  

3)悪性腫瘍(IVC-ALA-LDN Cancer Protocol

 様々な癌の治療におけるαリポ酸の有用性を示唆した論文が報告されています。

    ヒト癌細胞株をαリポ酸に暴露するとヒストンの高アセチル化がおこりアポトーシス(細胞の自殺)が誘発されたのに対し、正常細胞株では誘発されなかった、と報告されています。

    がん悪液質を起こしている進行性のがん患者では高度な酸化ストレスを伴う慢性炎症状態をひき起こしていますが、αリポ酸などの抗酸化剤がリンパ球の分化および成熟を刺激し免疫系の機能回復を促すことが報告されています。

    進行期のがん患者から分離された末梢血単核球の機能異常を修正(T細胞の機能を修復)した、との報告も有ります

New Mexico統合医療センターのBurkson医師は肝転移を伴う膵臓癌(低分化型腺癌)の患者にαリポ酸と低用量ナルトレキソンを投与し、進行を抑制できている症例を報告しています

 

 注意点としてはαリポ酸のサプリメント摂取によるインスリン自己免疫症候群(IAS)があげられます。IAS発症にはヒト白血球抗原(HLA)のうちDR4(DRB10406)型が関わっていることが報告されており、日本人は欧米人に比べて多く持っているため、IAS発症の事例が300例程度報告されています。重症の低血糖発作(動悸、手指振戦、発汗異常、口渇など)やインスリン(IRI)高値、インスリン自己抗体高値が認められますが、多くは摂取中止にて予後良好です。

 

参考 「アンチエイジング・ヘルスフード」水島裕監修 SCIENCE FORUM

   「酸化ストレスの医学」吉川敏一監修 診断と治療社

    34回点滴療法研究会実践セミナー